民生器RETISSAシリーズのレーザ網膜投影技術をご体験いただいた方に、そのご感想を伺うインタビューシリーズ。今回は、前回にご登場いただいた仲川祐樹様の二人の弟さん達に、RETISSA ON HANDとRETISSA DisplayⅡ+CAMをお試しいただいて、QDレーザのRETISSAマエストロの中村が話を伺いました。
【健司様】
中村:健司様、初めに現在の眼の状態について教えて下さい。
健司様:先天性白内障です。乳幼児時期の手術により完治していますが、水晶体の除去によって弱視となり、3歳頃から眼鏡を常用しています。2年前に右眼に眼内レンズを入れたので、現在の右眼の視力は0.3~0.4です。左眼は見えてはいますが、斜視があって視力の矯正はしておらず、視力は0.1以下です。弱視であること以外には、見え方に色覚異常などの問題はありません。
左眼は大きな文字も見えません。幼少時には、アイパッチで右目を塞いで、なるべく左目を使うように指導されました。1日最低1時間は右眼をアイパッチで覆うように言われていましたが、私にはその時間がかなり苦痛だったと記憶しています。残念ながら思うような成果は得られず、成長後も左眼は矯正しても0.1以下のままでした。
主に右眼を使って生活しています。幸い右眼は矯正すると1.0前後ありましたので、苦労はしましたが車の運転免許を取得することが出来ました。ただ実際は、右眼だけで見ていることから、運転するとどうしても右へ寄り過ぎます。また、左が見えていないことから接触することがあるかもしれないと考えて、車の運転はしないことにして、バイクを使用しています。
読書するにも、テレビを見るのにも右眼を使っているためか、右眼が疲れやすく、眼科の先生には眼圧が高めだとよく言われています。
中村:機器をお試しいただきます。
<ON HAND>
健司様:左眼は斜視があって視力もよくないので、普段は使っていないのですが、左眼で見えます。目の前に座っている兄の顔が見え、髪の毛も一本一本が見えます。文字も読めます。白黒反転が見やすいです。
<RD2CAM>
健司様:普段使っていない左眼でも、目の前に座っている兄の顔がなんとなく見えてきました。眼内レンズを入れている右眼は、左眼より見やすいです。映画館のスクリーンを見ている様に感じます。白黒反転やグレースケール反転することで、名刺の文字が読めました。機器をHDMIケーブルでパソコンにつないで、美しいウミガメの動画を見ることもできました。
【康司様】
中村:康司様、初めに眼の状態を教えて下さい。
康司様:先天性白内障です。手術で水晶体を摘出しました。現在裸眼での視力は右眼0.05、左眼0.1です。凸レンズの眼鏡を装用していて矯正視力は右眼0.08、左眼0.3で、効き目は左眼です。眼振があります。仕事はマッサージを含む訪問介護をしています。物を見ようとして、パソコンやルーペなどいろいろ使いますが、首も眼も疲れます。
中村:機器をお試しいただきます。
<ON HAND>
康司様:眼振があるのですが、ふつうに見えます。日中は室内も明るいですが、夜も同じように見えるのでしょうか?
中村:コントラストと明るさを調整することによって、見やすさを変えることができます。
<RD2CAM>
康司様:ピントが合っていてきれいに見えました。RD2CAMの眼鏡型が断然良いですね。両手が自由に使えますし、オートフォーカスも良いです。例えば、盲学校の授業で使うなら、眼鏡タイプが良いと思います。
中村:お二人にお伺いします。お使いになってみていかがでしたでしょうか?
健司様:私はON HANDの見え方が気に入りました。図書館で拡大読書器の代わりに使うイメージです。私は、デスクワークが多くて眼が疲れやすく、1時間ごとに休みを入れているのですが、ON HANDを使えば疲れにくくなるでしょうか?
中村:パソコンを使っておられる時の姿勢はいかがでしょうか?
健司様:良い姿勢で使えています。スタンディングワーク(立って仕事すること)も時々行っています。
中村:レーザ網膜投影を使うと眼のピント調整機能を使わずに見ることができますので、無水晶体眼の方の中にも「見える」とおっしゃる方がおられます。眼を凝らさず力を抜いて見ることに慣れるにつれて、疲れにくくなります。
康司様:私は手持ち型(ON HAND)より、メガネ型(RD2+CAM)の方が気に入りました。メガネ型の方が見やすいように感じたのですが、そういうものですか?
中村:ON HANDの方が、視野角が広いので、より見やすく感じるという方が多いようです。今日は先にON HANDをお試し頂きましたので、RD2+CAMをお試しいただいたときに、レーザ網膜投影に慣れたということかもしれません。レーザ網膜投影の映像を見るときは「見よう」とせずに力を抜いていることが効果的です。初めは少し緊張しておられて、眼が動いてことも考えられます。だんだん慣れてきて要領がわかってくるとうまく力を抜くことができます。そういう効果もあったかもしれません。
中村:お二人にお伺いします。どんな生活シーンでの使い方が考えられるでしょうか?また、製品改良へのご意見など頂けますか?
健司様:私の場合、普段の生活で問題なのは、右眼への負担です。例えば、白い紙に黒い文字という組み合わせの多い紙媒体の読書では、右眼への負担を強く感じます。ON HANDとRD2には色味調整・白黒反転等の機能がありますので、これらの機能も活用して眼への負担を減らせることを期待します。
康司様:訪問マッサージをしていますが、眼のよく見えてない方は多いので、そういう方々にもお勧めしたらいいと思います。また、オフィスでの仕事についている人の需要もあるのではないでしょうか。細かい文字を見ようとするときの負担を減らすという活用方法がいいと思います。
知り合いに、目が悪いが美術館巡りが好きという方がいます。見えているうちに綺麗なものを見ておきたいとの思いがあるようです。その人が、美術館でルーペを取り出してみようとしたら、館内の担当者に止められたそうです。「それをおやめください。作品を傷つけます。」と言われたそうです。ルーペが使えない環境があるということを知りました。新しく開発される機器も視覚補助具等として申請をして、広く認知させていくことも大事だと思います。
中村:撮影禁止という美術館は多いですね。図書館や美術館にON HANDを設置して、来場者に使ってもらうということも目指しています。
健司様:私は目が疲れること以外困っていることがありませんので、製品改良への意見を出すのは難しいのですが。レーザを使って、見やすくする技術があることに、新鮮さを感じました。知り合いに宣伝します。
中村:ありがとうございました。
*このインタビューは2022年9月24日(土)に奈良県大和高田市でQDレーザのRETISSAマエストロ 中村が行いました。
*個人の感想です。見え方には個人差があります。
*RETISSA RD2+CAM、RETISSA ON HANDは、医療機器ではありません。特定の疾患の治療や補助・視覚補正を意図するものではありません。
*網膜投影技術の詳しい仕組みはこちらをご参照ください。
https://www.qdlaser.com/applications/eyewear/
「RETISSAマエストロ」中村について
視覚情報デバイス事業部所属。2014年にQDレーザがRETISSAを開発し始めたときに、前職の株式会社美城(元メガネのパリミキ)から転職。眼鏡と視覚についての豊富な知識と、わかりやすい説明、優しい語り口調で、多くのお客様の信頼を得てきました。「RETISSA マエストロ」という称号は社内での愛称です。