今回の体験談QDレーザの社員から。機器の開発を進めるなかで「違和感」をおぼえて眼科に行ってみると…。RETISSAの新しい可能性を紹介いたします。
―自己紹介をお願いします。
私はQDレーザの視覚情報デバイス事業部長としてRETISSAシリーズ(民生機器)(以下RETISSA略す)の開発、量産を率いています。
RETISSAは元々目の見えにくい方向けの視覚支援機器として開発を始めました。今年の始めには視力障害向け医療機器として「RETISSAメディカル」の製造販売承認を取得しています。同じ仕組みを用いた「RETISSA Display」シリーズについても思いは同じです。そして、より支援の幅を拡げるためにRETISSA OptHeadに代表される広視野角な機器の開発も進めています。
今回の体験談はこの広視野角対応の試作機、レーザカレイドスコープ(LKS)によって疾病を発見することができた、というものです。
―それでは経緯を教えてください。
2019年5月末、大阪ヤンマースタジアム長居で開催された「日本パラ陸上競技選手権」でのことです。当社は日本パラ陸上競技連盟と「オフィシャルスポンサー」契約を締結していて、その一環として当社製品のデモを行っていました。パラ陸上選手のみなさんにデモをする合間に、より上手な使い方・説明方法を習得しようと自分でも何度か試していました。用意していたデモのひとつに、視野を題材としたゲームがありました。このゲームでどうしても高得点を取ることが出来ない事に気が付いたのです。
自分では視野が欠けている自覚は全くなかったのですが、もしやと思い次の週に眼科を受診しました。視力、眼圧、視野検査、眼底撮影、OCT(光干渉断層撮影)等の検査の結果、なんと緑内障であることがわかりました。正常眼圧緑内障という、眼圧には異常が出ないタイプの緑内障です。
―病気が見つかってから、どのようにされていますか?
幸い視野の欠けもまだ少なく、いまは日常生活には支障のないレベルですが、きちんと対処しています。
まずは毎日の目薬です。視野の欠けがあるのは右眼なので、そちらだけ。そして毎月眼科に通院して、眼圧、視力、角膜の状況、眼底の状況を診てもらっています。さらに3か月に1回はSLO(走査型レーザ検眼鏡)という装置で眼底を詳しく調べます。そして半年に1回の視野検査ですね。
視野検査はそう何度もできないので、RETISSAでのセルフチェックはときどきやっています。広い視野角のLKSならではの使い方ですが、私は網膜投影に慣れていることもあり、RETISSA Displayの方をつかっても視野が欠けている部分が「見えない」というのに気づくことができるようになりました。RETISSA Displayはよく見ますので、そのたびに変化がないかは気をつけていますね。
―今回の経験を通して思うことは何ですか?
統計によると40歳以上の20人に1人は緑内障なのだそうです。しかも、そのうちの大半は診断がついていない、気が付いていない状態といいます。緑内障は進行するまで自覚症状が少なく、発見が遅れる傾向があるようです。
眼科の疾患は多くの場合進行性で、しかも一度視力が失われると回復することはまれだと言われます。早期発見が重要な分野なのだと思います。一方で、意識して眼科検診を定期的に受ける人は少ないのではないでしょうか。
今回の私の様に、ゲームのように気軽に使える機器で緑内障の兆候を見つけ、眼科を受診するきっかけになればいいですよね。RETISSAの技術が、ロービジョンの方の助けになるだけではなく、多くの方の健康な視力を維持するためにも使えるかもしれない、というのは大きな可能性だと思います。
LKSによる視野のセルフチェックはまだ試作段階ですが、ぜひとも皆さまの目の健康の助けになる様な機器に育てていきたいと考えています。
*個人の感想です。見え方には個人差があります。
*LKSはLaser KaleidoScopeの略(開発中の名称です)で、ハンディタイプの小型・広視野角網膜投影装置です。
*RETISSA LKSは医療機器ではありません。特定の疾患の治療や補助、視力補正を意図するものではありません。
*自覚症状の有無にかかわらず、定期的な眼科検診をお勧めいたします。