民生器RETISSAのレーザ網膜投影技術をご体験いただいた方に、そのご感想を伺うインタビューシリーズ。今回は相模原市で眼科領域の訪問診療を行う 訪問眼科こうのクリニックの河野智子先生の患者様、坂井信幸様にRETEISSA NEOVIEWER(RNV:レティッサ ネオビューワ)の試作品を装着したデジタルカメラを1か月間お使いいただいて、お話を伺いました。河野先生もご協力くださいました。
―自己紹介をお願いします。
坂井様:坂井信幸51歳です。神経線維腫症という病気を持っています。いろいろな神経に腫瘍ができる病気です。その病気だと分かったのは22歳です。22歳と30歳の時に中枢神経の腫瘍を取り除く手術を受け、43歳で再手術を受けましたが、運動神経が損傷を受けたため、車いすを使うことになりました。目の方は当初問題なかったのですが、その後だんだん視力が落ちてきて、訪問看護師さんと相談して、眼科の訪問診療をしている河野先生に来ていただくようになりました。その後北里大学病院で詳しい検査を受けたところ、手術の影響で角膜が混濁し、また視神経が弱くなっていると診断されました。それで今に至ります。現在の治療としては点眼をしています。
今の見え方は、視界全体に白っぽい霧がかかったようです。治療のおかげで「霧」は少し薄くなってきてはいます。ただ普通の光を眩しいと感じます。視力は、右目は光覚弁、左は0.08程度です。
霧の向こうに見える世界はピントが合っています。しかし、まぶしさが強くて明るいところは苦手です。スポットライトを浴びているような感じになります。特に薬局の蛍光灯はまぶしいです。外出するときにはサングラスが必要です。
河野先生:角膜の混濁がある場合は混濁のせいで光が散乱するため、眩しさを強く感じることがあります。
ーお使いの視覚支援機器はどのようなものですか、また工夫しておられることはありますか。
坂井様:サングラスの他に、博士ルーペという眼鏡型の拡大鏡を持っています。老眼鏡も作りました。必要に応じて使い分けています。
(写真)RETISSA NEO VIEWER(RNV:レティッサ ネオビューワー)プロトタイプとデジタルカメラ
―初めてRNVを使われた時はいかがでしたか?
坂井様:「お~~」と言ったことを覚えています。先生が看護師さんと往診に来てくださっていました。もともと、近くにいた先生はぼんやり見えていてその後ろに立っている看護師さんは見えていない状態でしたが、RNVを覗いたとき、先生だけでなく後ろにいる看護師さんもよく見えました。霧が晴れて輪郭がはっきり見えた感じでびっくりしました。
河野先生:坂井さんはRNVを使うときに見やすいところを探しておられる様子ですね。混濁が少ない場所にうまく網膜投影なさっているのだと思います。
―RNVを日常生活に使ってくださったそうですが、いかがでしたか。
坂井様:しばらくお借りして、いろんな人が使うことを想定しながら、日常生活のシーンで使ってみました。
「見る、確認をする」という点では、とても有効だと感じました。郵便ポストへの投函がしやすかったですし、自動販売機のジュース・郵便局の各種申請書などすぐ目の前にあるものを見分けることができました。
カメラを覗いて見つけた物を手に取るときは、カメラで位置を確認してから裸眼でそこに手を伸ばすことになりますが、カメラと裸眼での距離の感覚がずれているためにスムーズにいかない事があり、慣れや訓練が必要だと感じました。ただし、これは車椅子に座った状態での事です。前かがみになる等、接近して確認できる場合は、問題はないのかも知れません。
横断歩道で歩行者用の信号機を見ることができました。道幅が広い国道で信号が遠くにある場合も、ズーム操作を使って信号機を見られました。ただし、時間はかかるので、まず信号の位置を確認したら次の青になるまで待ってから渡ったほうが良さそうだと感じました。次の青までの間RNVで信号を見続けることになりますが、少し重量があるので持ち続けられない人もいるかな?という気はします。私も少し腕に負担を感じました。
歩行者用信号機によっては、押しボタン式のものもあり、私は裸眼でもその確認と操作は可能なのですが、敢えて、カメラを通してやってみました。押しボタン自体は探すことも操作をすることも難しくはありませんでしたが、初めての場所に行った場合に、横断歩道を渡る度に押しボタンの有無を確認するのは大変かも知れません。
私の場合、見え方を悪くしている原因に「眩しさ」があります。裸眼では蛍光灯が明るいほど見えにくいのですが、カメラを通すと逆に蛍光灯が明るいほど鮮明に見ることが出来ました。日中の屋外もカメラを通してだと眩しさはほとんど気にならない程に軽減されました。夜にも外に出て使ってみましたが、やはりRNVを使っているときは、明るい方が見やすいということがわかりました。
河野先生:RNVはレーザ光が十分に細いので、混濁の影響を受けにくいという効果はあると思います。
―改良点についてご提案いただけますか?
坂井様:視力の低下と視覚の不明瞭さを補うという点では実用性は多分にあると思います。個人的にはもう少し手軽に扱えて、大きめの画面で素早く確認ができるようなもの、例えば、ハンディタイプのビデオカメラのようなものが使いやすいと思います。そういうものがあれば、ロービジョンの人たちにとっても生活必需品になるぐらいに実用性が広がるように思います。
福祉機器でいえば補聴器、一般に使われているものでは携帯電話やデジタルカメラなども、昔はすごく大きく、操作も複雑でしたが、どんどん手軽なものになっています。このRNVの小型軽量化にも今後大いに期待したいところです。
―レティッサ オンハンドという片手で使えるものを開発中ですので、次回は試作品をお持ちします。どうぞお試しください。
坂井様:それは楽しみです。貴重な体験をさせていただいてありがとうございました。またお役に立てることがあれば協力したいと思います。
―ありがとうございました。
河野智子先生の紹介
訪問眼科こうのクリニック(相模原市南区/相模大野駅)
眼科領域の訪問診療を行うクリニックの院長先生です。大学病院の助教や総合病院の眼科部長などを歴任後、「眼科に行けない人たちに医療を届ける」という志のもとに、2017年に訪問眼科こうのクリニックを開業なさいました。目の健康を維持することで患者さんのQOLを高めることを目標に、介護にあたる家族のケアにも配慮なさっています。
※こちらをご参照ください。
https://kono.clinic/
*このインタビューは2022年8月29日におこないました。
*個人の感想です。見え方には個人差があります。
*RETISSA NEOVIEWERは医療機器ではありません。特定の疾患の治療や補助・視覚補正を意図するものではありません。
*網膜投影技術の詳しい仕組みはこちらをご参照ください。