民生器RETISSAのレーザ網膜投影技術をご体験いただいた方に、そのご感想を伺うインタビューシリーズ。今回は、横浜市立盲特別支援学校の原田先生にRETISSA SUPER CAPTUREをお使いいただき、RETISSAマエストロ中村が、ご感想を伺いました。
―自己紹介をお願いします。
横浜市立盲特別支援学校教諭です。あん摩マッサージ指圧・はり・きゅうを教えています。また、校内に支援学校としての専門性を維持するために作られている弱視教育研究部に所属し、見え方の評価などを研究しています。学校のホームページ内には、同僚と「教えて盲学校」というコーナーを運営しています(写真1,2)。
―眼の状態について教えてください。
先天性の白内障です。2歳のときに続発性緑内障を発症しました。2歳の時に2回、小学2年生の時に2回手術を受けて、最終的に水晶体を摘出しました。それ以外に眼圧を下げる手術も何度か受けています。
視力は小学2年生の時に右0.02、左0.04でした。それから徐々に進行して、中学1年生の時までに右眼は失明しました。光も感じません。左の矯正視力は0.09から0.1です。
視野は検査をすると欠損しているといわれますが、自覚としては縞状に見えていて、広い範囲は見えていないものの欠けている感じはしていません。今の見え方を学校のホームページで紹介しています(写真3)。「私は、無水晶体眼です。モノを大きく写す水晶体がないの。だから虫眼鏡を使って文字を見ているの。しもんが水色で、点字ブロックが黄色で黒い何かを持っているの分かるけど、しもんのお顔をよく見えないんだ。」
https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/ss/yokomou/index.cfm/2.html
横浜市立盲特別支援学校公式サイト内 「しもんの部屋」
―視覚支援機器はどのようなものをお使いですか?また、工夫していることがありましたら、教えてください。
眼鏡とコンタクトレンズを使っています。一度に両方使うことはなく、必要に応じて使い分けています。それと同時に便利に使っているのは5倍のルーペです。教科書などの文字もこれらを使って読めますし、小さい文字を書くこともできます。大きい文字ならルーペを使わなくても読めます。
スマートフォンも使いますが、外出時にはもっぱら単眼鏡を使います。10倍のものと30倍のものを目的に合わせて使い分けます。のぞけば見られるので、スマホより簡単です。
片手がふさがってしまう白杖は持っていません。拡大読書器も使っていません。
―お買い物やお食事などで工夫なさっていることはどんなことですか?
インターネットを利用しますが、試着が必要なものなどはお店で買います。店頭で値札などの表示を見たいときは、店頭で鞄の中をごそごそするのは少し気が引けますので、単眼鏡を使わずに店員さんに尋ねます。店員さんが近くにいないときや、お店の外からウィンドウの中のものを見るときは単眼鏡を使います。または、ラベルを見てくれる人と一緒に行きます。食料品、お肉などの種類は表示を見て判断します。クレジットカードの暗証番号は勘で押しますが、たいてい間違えずに押せています。銀行の番号は数字の場所が変わるので、ルーペで見てから押します。
食事中は特に困ることはありません。切ってある梨と大根などは見分けにくいですが、魚の骨を取ったりすることは得意です。だんだん視力に頼らなくなり、見えないことに慣れてきます。過去に網膜剥離を起こして、回復するまで何も見えず全盲の状態になりました。でも現在は元の視力まで回復しました。
―レティッサスーパーキャプチャを使われて、いかがでしたか?
単眼鏡よりも広い範囲が、より明るく、よりクリアに見えます。同じ30倍でもRSCの方がくっきり見えます。遠くを見るのに使いました。最初に覗いたとき、「学生時代に持っていたらもっと黒板の字が見えただろうな」と思いました。
明るくクリアに遠くまで見えるので「これなら野球観戦ができる」と思いました。私はスポーツを見るのが好きなので、学校の近くの横浜スタジアムに単眼鏡を持って行くこともあるのですが、ボールを追うことはできません。RSCを使えば、広い範囲を一度に見ることができて、そのうえ必要に応じて拡大して見ることもできるので、球筋を目で追えると思います。野球の観戦に使ってみたいです。
それから、オートフォーカスなのが便利です。単眼鏡はピントを合わせる必要があります。30倍の方が難しいです。単眼鏡を使いこなすのに苦労している生徒やあきらめてしまう生徒もいます。
授業ではまだ使っていないのですが、筋肉の模型などを説明するときに使えたらいいと思っています。
―生徒さんたちに使っていただくなら、どのようなシーンがいいと思われますか?
(教務主任吉木先生)9月に中学生の修学旅行があります。RSCを使えそうな生徒さんが参加しますので、そこに持って行って試してもらおうと思っています。金閣寺などを回る予定です。
―改良したらいいと思われる点はありますか?
もっと軽くなるといいと思います。電池が重いのだと思いますが、今は喫茶店や新幹線の車内でもコンセントがありますので、屋内でコンセントにつないだまま使うようにしてもいいと思います。カメラの機能を使って30倍まで拡大できるそうですが、そういう製品は、小型になれば晴眼の人もみんな欲しがると思います。
私には両手がふさがらない形の方が使いやすいです。眼鏡型でオートフォーカスのカメラをつけて、コンセントにさしてつかう形にすれば、家で本を読んだり勉強したりするときに拡大読書器より便利に使えると思います。
―オンハンドという製品を開発中です。近くを見るときに片手で持って、文字を見たり読んだりするのに使えるものです。まだ単眼鏡ほど小さくありませんが、視野の広さはRSCと同じで、倍率はRSCほど高くありません。
それを是非使いたいです。おいくらですか?目の前において、本を読んだり、爪の手入れをしたりするときにも使えると思います。どこかで試してみることはできますか?とても興味があります。
―オンハンドは今年度中に発売開始の予定です。値段は未定ですが、お求め安くなるように、日常生活用具給付事業の指定を受ける手続きをします。次回お目にかかるときにお持ちしますので、ぜひ使ってみてください。
本日はありがとうございました。
*このインタビューは2022年7月22日に行いました。*個人の感想です。見え方には個人差があります。
*RETISSA SUPER CAPTUREは医療機器ではありません。特定の疾患の治療や補助・視覚補正を意図するものではありません。
「RETISSAマエストロ」中村について
視覚情報デバイス事業部所属。2014年にQDレーザがRETISSAを開発し始めたときに、前職の株式会社三城(元メガネのパリミキ)から転職。眼鏡と視覚についての豊富な知識と、わかりやすい説明、優しい語り口調で、多くのお客様の信頼を得てきました。「RETISSA マエストロ」という称号は社内での愛称です。