今までにない体験です!

#26

民生器RETISSAのレーザ網膜投影技術をご体験いただいた方に、そのご感想を伺うインタビューシリーズ。今回は文京盲学校で教鞭をとっておられる田中先生にRETEISSA NEOVIEWER(注)(レティッサネオビューア RNV)の試作品をお使いいただいて、RETISSAマエストロ中村がお話を伺いました。
(注)RETISSA NEOVIEWER(レティッサネオビューア RNV)は通常デジタルカメラに取り付けて使用します。

中村:眼の状態について教えてください。

田中先生:先天性の小眼球弱視で、12歳から20歳までの間で網膜剥離のために頻回に手術を受けました。硝子体切除やレーザ照射などです。最後の手術は32歳ごろですが、その後現在まで安定していて網膜剥離は起こしていません。
現在は無水晶体眼で正常眼圧緑内障もあり目薬キサラタンを差しています。見え方は、視野が両眼で肩幅くらい、加齢に伴う視神経萎縮が進んで徐々に視野が狭くなってきています。視力はコンタクトを入れて右が0.02、左は0.06です。乱視もあるのでメガネでは矯正できず、コンタクトを使っています。無水晶体用のソフトコンタクトには使い捨てのものはありませんので、2年ごとに買い替えています。ハードは、ずれたときに直せないので使えません。

中村:視覚支援機器はどのようなものをお使いですか?

田中先生:ルーペ、拡大読書器、スマートフォン、単眼鏡を使っています。普段、読み書きするときは高倍率のメガネ式弱視眼鏡ツァイスか、拡大読書器を使用しています。紙の本は、自分の本の場合は裁断してPDFで取り込んでパソコンで拡大して読みます。自宅では24インチのモニターを使います。文字が多いものを読むときは白黒反転しますが、図はフルカラーの方が見やすいので、図が入っているページは白黒反転しません。自宅にはモニターは4台、拡大読書器は2台置いています。
 文字を書くときはコンタクトを装着した上から老眼・拡大の眼鏡をかけます。手書きは極力避けて、パソコンを使います。銀行など自筆のサインが必要な場合だけ手書きしますが、手が覚えている通りに書いていて見ていません。自分の文字を見ながら書くのは必要に迫られた時だけです。
公共交通機関、バス・電車での移動は単眼鏡で行き先を確認します。あらかじめインターネットで路線や料金を調べてから出かけます。また、グーグルマップの音声ガイドも使っています。白杖は生徒たちには使うように言っているのですが、私は突いていません。

中村:日常生活の中でお困りのことがありましたらお聞かせください。

田中先生:無水晶体になってしまったので、視野が狭くなってしまいました。それでも30歳くらいまでは視野がもう少し広くてコマ全体が見えていたので、漫画なども楽しんでいました。ストーリー性のある漫画はコマ全体が見えるからこそ面白いのだと思います。今でも一つ一つの吹き出しの文字は、単眼鏡で拡大して読むことができますが、若いころに体験したような漫画の面白さは減りました。
同様に洋画は字幕を追うと、画面を見ることができないので、内容が頭に入りづらいです。昔の字幕は縦書きで、右端に出たり左端に出たりしたので、より見づらかったです。洋画を見るときはできるだけ吹き替えなど、音声でわかるものを選択しています。なければ、字幕付きのものを見ますが、楽しみは減りますね。新しい技術ができれば豊かになれるのだと思っています。できれば、画面全体が視界に入るような方法があればいいと思います。
スポーツはあまりしていません。もともと体を動かすことにあまり興味がありませんでしたから、見たいと思ったこともありません。スポーツが好きだったら見えなくて困っていたかもしれません。
買い物するときには、困ることが多いです。値札を確認できませんから、値段を見ないで買います。支払いの時、又は帰ってから値段に驚くこともしばしばです。でもお店に人に聞いたり、値札に顔を近づけたりしてまで値段を確認したいとは思いません。見栄を張っているのだと思います(笑)。

中村:RNVをお使いいただいた後のご感想をお聞かせください。

田中先生:デジカメを使ったことはあるので、半押しでフォーカスを合わせる方法などはすぐにわかりました。最初の感想は「視野角が広い。かなりくっきり見える。」ということでした。自分は無水晶体なのにピントが合っていることが不思議です。8mほど先に貼ってあるポスターも見えました。こんなことは初めてです。時計も楽勝で見えます。遠くにまでフォーカスが合うのがすごいです。いつもだったら顔がくっつくほどに近づいて読んでいる大きさの文字が離れていても見えました。
画期的なのは、カメラの起動画面に表示される6行~7行の説明文が、全部読めたことです。いつもは1行ずつしか見えないのに、これは我々にはなかなか無い体験です。複数行を、顔を動かすことなく見られたことがすごいです。
HDMIで繋げばマンガを読んだり、字幕映画を楽しんだりもできるかもしれません。
いつもはほとんど使っていない右眼でも試してみました。私はもともと眼球振盪があり、左眼は訓練しました。右眼は訓練していませんがそれでもRNVを使って文字を読むことができました。

中村:改善したらよいと思うことがおありでしたら、聞かせて下さい。

田中先生:もっと明るいと良いのにと思います。すこし暗く感じます。カメラの輝度調整で明るくしてもらいましたが、あまり変わりませんでした。
カメラ型より眼鏡型の方が使いやすいと思います。フリップアップのサングラスやドラゴンボールのスカウターのように使わないときは跳ね上げておいて、必要なときにだけ目の前に降ろして使えるようになるといいと思います。店先で値札を見るときもカメラで値段確認するのは不自然だと思いますので、眼鏡型がいいです。
一方、以前試した眼鏡型よりも今回のRNVは視野角が広くてとても見やすいです。この視野角で眼鏡型になったらぜひ欲しいと思います。
また、機械RNVを買っただけではほとんど使いこなせないと思うので、どのように訓練するのかを提案する必要があると思います。機械の開発の次の段階では、どのように訓練するかのプログラムの開発が必要になると思います。

中村:以前お試しいただいた眼鏡型のRETISSA Display Ⅱの視野角は26度であるのに対し、RNVの視野角は60度です。現在開発中の新製品は眼鏡型で視野角が40度になる予定です。

中村:先生が学校で使用なさるとき、生徒さんが使われるときなど、場面によってどのように使えると思われますか。

田中先生:この先、RNVの視野角のまま眼鏡型になったものができて、私が学校で使うとしたら、講義ノートを画像にしておいて、プロンプターのように片目に投影して授業すると思います。晴眼の教師は、講義中に教卓の上に置いた講義ノートをちらっと見て確認することができますが、我々はそのようなことができません。弱視の教師は、大きな文字で講義ノートを書いたり、時間をかけて講義ノート内容を覚えたりしてから授業しています。丸暗記する必要はないのですが、講義の順序などポイントを覚えておく必要があります。メガネ型の装置を使えば、講義ノートを覚える時間を他のことに回せますし、講義ノートをチラッと確認する晴眼の先生に近いふるまいができると、生徒からの印象も違うのではないかと思います。
生徒が使うことを考えると、盲学校にこれを使いこなせる生徒がいるのか疑問です。盲学校は、視覚補償機器がなくても学習に苦労しないような環境になっているからです。むしろ普通校で苦労している弱視児童は、視覚補償機器を使いこなしていて、努力してきているので、RNVも使いこなせると思います。使う側も使いこなす努力、目的を見据えた訓練が必要だと思います。

中村:視野角40度の眼鏡型の製品ができましたら、ぜひお試しいただきたいと思います。
本日はありがとうございました。

*このインタビューは2022年7月8日にQDレーザのRETISSAマエストロ中村が行いました。
*個人の感想です。見え方には個人差があります。
*RETISSA NEOVIEWERは医療機器ではありません。特定の疾患の治療や補助・視覚補正を意図するものではありません。
*網膜投影技術の詳しい仕組みはこちらをご参照ください。

「RETISSAマエストロ」中村について

視覚情報デバイス事業部所属。2014年にQDレーザがRETISSAを開発し始めたときに、前職の株式会社三城(元メガネのパリミキ)から転職。眼鏡と視覚についての豊富な知識と、わかりやすい説明、優しい語り口調で、多くのお客様の信頼を得てきました。「RETISSA マエストロ」という称号は社内での愛称です。

ご協力いただいた方

田中様 (59歳)

ご職業

東京都立文京盲学校 教諭

眼の状態

無水晶体眼 正常眼圧緑内障
矯正視力:右眼:0.02 左眼:0.06

ご体験いただいた製品

RETISSA NEOVIEWER