RETISSAの網膜投影技術をご体験頂いた方に、そのご感想を伺うインタビューシリーズ。今回は、RETISSA NEOVIEWER(RNV、レティッサネオビューワ)の試作品を装着したデジタルカメラをお試しくださった、東京都立文京盲学校の先生に、当社RETISSAマエストロ中村がお話を伺いしました。
中村:自己紹介をお願いします。また、眼の状態と見え方について教えてください。
メグミ先生:東京都立文京盲学校教諭です。理療科で、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅうを主に教えています。
眼は無水晶体眼で、左眼はほとんど使っていません。右眼はまだら視野で、視力は0.03~0.04程度です。小さいときからずっとコンタクトレンズを使っています。朝起きたときから寝るときまでずっと入れています。コンタクトを使うと、物のエッジが少しはっきりします。
先天性の白内障で、生後2か月頃に水晶体を摘出しました。眼内レンズは入っていません。
10年ほど前に左眼が緑内障になりました。今は、何かがあるのがわかる程度で、ほとんど使っていません。右眼もその時に視野が狭くなったので、見えづらくなってきている感じがします。例えば、正面にいる中村さんの顔を見ると、マスクは白だから分かりますが、眼鏡をかけているかどうかはわかりません。
中村:どのような工夫をなさっていますか。
中村:どのような工夫をなさっていますか。
メグミ先生:私は、大学院卒業まで盲学校には通ったことがなく、授業中は黒板は見えませんから、先生の話を書き取り、後でノートを作り直していました。
電車を利用するときは、駅で歩きながら看板を見るのは無理なので、都内の大きい駅構内の地図を頭に叩き込んであります。変更があったと聞いたら、実際に見に行って覚え直します。それができなければ駅員さんに誘導を頼むことになります。
地図アプリなどは使わず、地図を覚えます。歩いているときは常に方角感覚を保っているので、めったに間違えません。頭の中で、覚えている地図と照らし合わせながら歩きます。
教科指導をするとき、教科書はあまり見ません。どの教科も。自分の学生だった時の記憶で、だいたいどこに何が書いてあるか覚えています。よっぽど困ったら見ますし、生徒に図表を紹介するときにも使うので、開いて教卓に置いてはいますが、基本的には見なくて大丈夫です。
中村:視覚支援機器は何をお使いですか?
メグミ先生:ルーペとスマートフォンをよく使います。最近、iPhoneを13 proにしたのですが、3倍ズームがとても良いです。画質をあきらめれば「拡大鏡」アプリを使えばかなり拡大できます。
授業で生徒の鍼の動きなどを見るときに使っています。自分のスマホに授業の画像を保存してはいけないという決まりがあるので、その場で消しています。名刺を見るときなどは、スマホで拡大しますが、拡大しても見えない場合には、拡大した画面をスクリーンショットで撮影して、その写真を再び拡大して見ています。
遠くを見るときは単眼鏡を使います。素早く使えるのはルーペです。スマホは出せない場所もありますが、その点アナログは安心です。
文字は白黒反転が読みやすいです。屋外では、遮光のサングラス、パソコンを見るときは薄めの遮光グラスを使うなど、3種類の茶系遮光サングラスを使っています。以前ギリシャに行ったとき、サングラスをしたままで、ギリシャの壁は茶色だと思い込んでいました。サングラスを外して、「ギリシャの壁は白やった!」と気づき大笑いしたことがあります。
色の判別は得意なので、文字よりも色判別が楽です。ファイルやノートなどは色を変えたり、色付きのシールを使ったりして区別しています。
白杖は慣れているところに出かけるときは使いませんが、常に持っていて、混んでいるところ、慣れていないところでは必ず使います。
中村:日常生活で困っておられることはありますか?
メグミ先生:バスの行先を確認できず困ります。バスが近づいてくる音がしたら、単眼鏡でバスの前に表示されている行き先を探し始めますが、見つかる前にバスが到着してしまうと行き先が確認できなくて困ります。単眼鏡でとらえきれないときは、行先の文字数で判断しています。例えば「錦糸町」と「ドームシティ」などは文字数が違うので判別できます。降りるときは外の景色で判断するのは厳しいので、音声案内を頼りにしています。
点字ブロックはライフラインですが、黄色以外の色、例えば銀色や地面と同じ色だと困ります。だいぶ減りましたが途中で切れているのも困りますね。改修工事などで点字ブロックが仮設の壁で遮られていると、どこに行ったらいいのかわからなくなります。
鍼やマッサージの手技は少し違うだけで効果が大きく異なるので、細かく指導したいのですが、見えるところまで近寄ることはできません。近づきすぎるのは良くないと指導していますし、私の頭が邪魔になるからです。全体のバランスを一度に見て指導できたら楽だと思います。スマホで一生懸命見ていますが、足の位置や手の角度、手元を行ったり来たりして確認するのは結構厳しいです。
買い物はいつものスーパーでします。売り場の位置は覚えていますが、値段は見えないので、確認しないで買っています。以前コンビニでスマホを使って見ていて、「撮影はダメです」と言われたことがあります。また言われたらいやなので、出しにくいです。生徒の歩行指導のために、セブンイレブンでスマホを使えるように交渉しましたが、なかなかOKしてもらえなかったという経験もあります。
中村:RNVをお試しください。
メグミ先生:見えます。倍率を上げれば、黒板の「会議室の使用について」という張り紙が読めます。校長先生が見えますね。中村さんが眼鏡をかけていることもわかります。眼が揺れているのですが、揺れても端が少し欠ける程度でずっと見えています。時計を見ました。1時38分ですね。ポスターも読めます。「視力の弱いお子様のために。こんなことにお困りではありませんか。」ピントが合うのが速いと思います。
以前試した眼鏡型(RETISSA Display Ⅱ+カメラ)より視野が広くなっていてとても見やすいです。いつもは極端に目を近づけないと本やテレビは見られませんが、これなら結構見られますね。いつもなら倍率の高い大きい単眼鏡でも絶対見えないようなものが見えました。
中村:先生の座っておられる席から黒板までは8メートルくらいあります。(写真2)
メグミ先生:面白い。すごい。見える楽しい。子供か!(笑)1メートルくらい離れたところにいる中村さんの手元、指先が見えます。指で机を押したときの肌の色の変化も見える。これなら、近寄らなくても生徒の手の向きを見ながら指導するのに使えます。iPadでみるより良いです。アイキャップに目を付けて見るようになっているので、まぶしくなくて楽。画像がはっきり見えます。これだけ視野が広いといいです。
中村:ご要望をお聞かせください。
メグミ先生:もうちょっと軽かったらなあ。メガネ式になっていて、コントローラーが手元にあると助かります。この画質はキープしてほしいです。視野の広さが何より良いです。網膜投影装置は4年前からいろいろ試しているが、このRNVが一番見やすいです。歩いて景色を見たことがないので、RNVを使いながら歩いてみたいです。この重さのままなら固定する三脚などがあると使い易そうです。
中村:どのような使い方を思いつきますか。
メグミ先生:この席にいたまま、教室の窓の鍵が掛かっているかどうかが見えるので、下校時の戸締り点検の時に窓の鍵に触りに行かなくてよくなりますから、早く点検を終えることができそうです。
手元の文字もよく見えますが、遠くのものや動きのあるようなものを見る方が、RNVは向いているように思います。
実技指導で使うのであれば、両手が使えるようにメガネ型であることが一番いいですが、それがだめなら、固定して使いたいです。実技を見ながら、口頭で指導できます。
生徒が授業で使うなら、座学よりも実技の時間に使ってもらいたいです。先生の実技を近づきすぎずに見られていいと思います。全体も見られるし、ほかの人の邪魔にもなりません。弱視の生徒を一度に指導できて時短になりそうです。座学でも三脚などがあれば板書を書き取るときに使えるかもしれません。視野としては、黒板全体が見えそうなので、単眼鏡を使っている児童生徒は使えそうです。単眼鏡より映像がダイレクトに見えて、見やすいと思います。
これをつければ走れるかもと思いました。私は陸上をしていました。小学生の時は1位で走るとコースがわからないので、1位の子の背中を見て走る必要があって、いつも2位でした。ゴール直前で抜けばいいとよく言われますが、そのゴールが見えないのです。伴走がついて初めてトップスピードで走れるようになりました。
中村:RNV付きデジタルカメラを自分自身で購入したいと思われますか。
メグミ先生:いい眼鏡を作ったら、20万近くになることもありますから、同等でも買いたいと思いますね。
中村:ありがとうございました。
*このインタビューは2022年7月21日に行いました。
*個人の感想です。見え方には個人差があります。
*RETISSA NEOVIEWERは医療機器ではありません。特定の疾患の治療や補助・視覚補正を意図するものではありません。
*網膜投影技術の詳しい仕組みはこちらをご覧ください。
「RETISSAマエストロ」中村について
視覚情報デバイス事業部所属。2014年にQDレーザがRETISSAを開発し始めたときに、前職の株式会社三城(元メガネのパリミキ)から転職。眼鏡と視覚についての豊富な知識と、わかりやすい説明、優しい語り口調で、多くのお客様の信頼を得てきました。「RETISSA マエストロ」という称号は社内での愛称です。