生まれて初めてはっきりとモノが見えました!

#29

 民生器RETISSAシリーズのレーザ網膜投影技術をご体験いただいた方に、そのご感想を伺うインタビューシリーズ。今回は平塚盲学校の高等部1年生の伴さんにRETISSA NEOVIEWER (RNV レティッサ ネオビューワ)とRETISSA ON HAND(レティッサ オンハンド)をお試しいただいて、レティッサマエストロ中村がご感想を伺いました。

 伴さんは眼皮膚白皮症(アルビノ)による弱視をお持ちです。レーザ網膜投影による見え方は人によって異なりますが、アルビノによる弱視の方には大きな効果が得られる方がいる、ということがわかってきました。QDレーザは全国6,000人のアルビノの皆さんにレティッサをお試しいただきたいと願っています。
 ここで使用されているネオビューワは昨年QDレーザが行ったクラウドファンディングによって、盲学校の届けられたものです。※RETISSA SUPER CAPTURE(RSC レティッサスーパーキャプチャー)は、RETISSA NEOVIEWERと改名しました。

(中村)自己紹介をお願いします。

(伴さん)神奈川県立平塚盲学校高等部の1年生です。今年の6月に学校で視覚補助機器展示会が行われ際に眼鏡型のRETISSA DisplayⅡとカメラ型のRETISSA NEOVIEWERを体験したことがきっかけで、インタビューに協力することにとなりました。

(中村)眼の状態を教えて下さい。

(伴さん)眼皮膚白皮症(アルビノ)による弱視があります。視力は、左右共に、0.1~0.15で、生まれた時から変わっていません。眼鏡はかけても見え方が変わらないので、かけていません。眩しさを強く感じるため、外出するときは杏林大学の新井視能訓練士のもとで作った度付きサングラスを使っています。
 低学年の頃は、盲学校の同級生が見えていないものも自分には見えていましたので、自分はよく見えている方だと認識していました。学年が上がるにつれて、例えば駅の表示が見えなかったりすることで、普通の人より見えていないことが分かってきました。

(中村)普段はどのような機器をお使いですか。

(伴さん)授業の時は、眼鏡やプリズム眼鏡もかけずiPadを使います。カメラ機能を利用して拡大して物を見たり、一度写真にとってからさらに拡大して見たりします。 もう一つのiPadはUDブラウザという教科書閲覧アプリケーションを入れて教科書を読むのに使っています。文字のサイズは14から22ポイント、フォントはゴシックから明朝が見やすいです。文字は白黒反転せず、フルカラーで読んでいます。
 余暇では拡大読書器を使って、プラモデル製作を楽しみます。普通の組み立ては説明書を見ながら裸眼でできますが、細かな塗装時には筆先が見えた方が助かるので、拡大読書器の下にパーツを置いて塗っています。


(写真2)ON HANDで文字を書く。紙を顔に近づけなくても見えるので、良い姿勢のまま書くことができました。

(中村)お困りのことはありますか?

(伴さん)本やパソコンは顔をかなり近づけて裸眼で見ているので眼が乾きます。長時間になりますし、もともと姿勢が良くないこともあって、首・肩・腰に痛みが出ます。「伴君、まだ若いのに腰が痛いなんて、大丈夫なの?」と言われたりしています(笑)。
 高校へは徒歩で通学していますが、道を歩いて困ることは信号が見づらいことです。通常の色はわかりますが、逆光の信号は見づらいです。初めてのところに行くときはあらかじめ地図を見てから出かけます。いかんせん方向音痴なので、出先でもスマホのグーグルマップを使って確認しますが、信号機などに付けられている交差点の名前などの表示が読めないので、自分のいる位置を確認するのが難しいです。不安な時はコンビニで飲み物を買って、支払いの時に「こちらのお店は何店ですか?」などと聞いたりしています。
 買い物の時に商品のラベルは見えていますが、賞味期限などの文字が確認しにくいことが困ります。いちいち店員さんに聞くのもはばかられるので・・・。
見えたらいいと思うものに、車のナンバープレートがあります。よその駐車場で自分の家の車を見分けるためにナンバープレートで確認できたらいいと思います。顔を近づけてよく見れば見えるのですが、周りの人に不審がられると思います。
それから、人の顔を覚えるのが苦手です。知り合いがいても気づかない、知り合いではない人だと思うけど確信が持てない、人込みでは父の顔が見つけられないということが起こります。洋服や体格で判断しています。名前を名乗って話しかけてくださると助かります。

(中村)レティッサを使われた感想を聞かせてください。

(伴さん)今年の6月に学校の体験会で初めて試したときは、生まれて初めてはっきりとモノが見えたので、とてもうれしかったです。
 今日初めて使ってみたON HANDは、机に置いてプラモデル製作をするのに使えそうだと思いました。また、文字も書くのにも使えました(写真2)。良い姿勢のままで書くことができました。
 また、今日再びRETISSA NEOVIEWERを試してみました。教室にいらっしゃる先生方の顔を「かなりまじまじ」と見ることができました。5本指を示してくださったのもわかりましたし、名札の文字もはっきり見えました。カメラの機能なのかレチクル(白い枠)が表示されるので、顔の位置がすぐにわかります。壁の時計は近づかなくても長針と短針が見えるので、何時何分なのかはっきりわかりました。

(中村)普段写真を撮ることはありますか。

(伴さん)撮影技術がないので、写真を撮ることはあまりしません。ピントを合わせて撮ったつもりでも、写真を見た友達に「ぼけてるよ。」と言われたことがあります。
 でもこの度学校の校外学習でかまぼこ工場に行ったときに、RNVで写真を撮り、パネルに貼りました(写真3)。動いている電車がちょうどいい位置に来るのを待って、撮影することができました。RNVならファインダーをのぞいた映像が見やすいですし、写真も撮りやすいと感じました。


(写真3)RETISSA NEOVIEWER付デジタルカメラで伴さんが撮影し、パネルに貼ってくださった作品

(中村)普通のカメラと見た目が変わらないという点もいいところだと考えています。
改善した方が良い点などがありましたら、聞かせてください。

(伴さん)前提として、こちらの技術はとても素晴らしいもので、非の打ち所がないぐらいの完成度だと思います。もし強いて言うとすれば、少し重量が重いと思います。視覚障害者は、白杖など荷物が多くなりがちなので、少しでも軽い方が助かります。例えば、カメラのバッテリーとビューファインダーのバッテリーを共通にして一つにするなどはどうでしょうか。稼働時間は減るでしょうが、少しでも軽いと有難いです。
 それから、グリップがあるととても持ちやすくなると思います。乗り物に乗って撮影しているときにそう感じました。また、これは私だけかもしれませんが、まつ毛がかかってしまいます。一緒にこのカメラを試したS君も同意見でした。改善されるとより見やすくなると思います。
 視覚支援機器として補助金が下りるときには、カメラとファインダーがセットとして認められるとありがたいです。できるだけ乗り換えやすい環境を作っていただけたらと思います。
 この製品は、見えにくい方だけでなく、普通の人も使いやいものだと思います。例えばファインダーのアイカップの形状は、外からの光をさえぎってくれるので、視覚障害のない人も撮影しやすくなると思います。
 これほど素晴らしい製品に出会えるとは思っていませんでした。

(中村)ありがとうございした。お試しいただいた機器はプロトタイプです。今後も重さ、グリップ、ファインダーの形状を技術チームと検討してまいります。視覚支援機器として適切な補助をしていただけるように申請をし、できるだけお求めやすい形でご提供できるようにしていきたいと考えております。

*このインタビューは2022年11月3日に行いました。
*個人の感想です。見え方には個人差があります。
*RETISSA NEOVIEWER、RETISSA ONHANDは医療機器ではありません。特定の疾患の治療や補助・視覚補正を意図するものではありません。
*網膜投影技術の詳しい仕組みはこちらをご参照下さい。
*RETISSAを使った、アルビノの会によるクラウドファンディング「アルビノの学生に自分の眼で動物園を楽しんで欲しい」が実施されています。こちらも是非御参照ください。

「RETISSAマエストロ」中村について

視覚情報デバイス事業部所属。2014年にQDレーザがRETISSAを開発し始めたときに、前職の株式会社三城(元メガネのパリミキ)から転職。眼鏡と視覚についての豊富な知識と、わかりやすい説明、優しい語り口調で、多くのお客様の信頼を得てきました。「RETISSA マエストロ」という称号は社内での愛称です。

ご協力いただいた方

伴威吹様(16歳)

眼の状態

眼皮膚白皮症(アルビノ)

視力:
右 0.1~0.15
左 0.1~0.15

ご体験いただいた製品

RETISSA NEOVIEWER
RETISSA ON HAND